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NEWS
- 12/6/13
- 書籍「社労士が見つけた!(本当は怖い)採用・労働契約の失敗事例55」6/13発売しました。
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東京の季節
- 著者
- 高木健夫
- 発行
- 昭和30年(1955年)
- 著者
プロフィール - 1905年福井県生まれ。「国民新聞」「読売新聞」「大阪毎日新聞」などの記者を経て、昭和14年北京で「東亜新報」を創刊して主筆となる。 戦後「読売新聞」に論説委員として復帰、昭和24年から17年間コラム「編集手帳」を担当。
冬
反省三百六十五日
反省三百六十五日―一九五四年―
今年一年をふり返ってみての印象は? ときかれたらわたくしはつぎのように答える「戦争もないのに、日本人が生命を粗末にした年でした」と―。
二重橋の惨事にはじまった「集団殺人ニュース」はビキニの死の灰につづき洞爺丸から相模胡、富士山のなだれ―と系統的(?)に首尾一貫してここに有終の美をなした。これらはもちろん十大ニュースだが、ニュースの価値がこのような殺人量できめられた、というところに今年の悲しい特徴があったと思う。厚生省の人口動態のしらべによると、今年の死亡率は非常に減ったけれどもその反対に事故による死亡者は三万五千人前後というレコードをつくって、死因の第七位を獲得している。大量殺人の大ニュースとして報道はされないけれども、この数字は交通事故による死亡者のふえている証拠と考えてもまちがいはあるまい。
人命軽視の風潮は他動的なものと自動的なものとがある。交通事故などはこの両方の原因にハサミうちにされてすごくふえている。事故死ほどつまらぬものはない。しかもそれが天災というよりも人災が原因であることにおいてをや。
自動的な死亡は自殺と心中である。この自殺と心中が、死亡原因のベスト・テンのうちの第九位を占めている、ということは、これはたしかに今年のみならず明治三十二年に人口動態調査がはじまって以来の半世紀聞の大ニュースであった。この原因をひと口でデフレとだけいって片づけてしまっていて、それでよいものかどうか、疑問である。
きのうの夜、ポータブル・ラジオの電池がきれたので近くのラジオ屋へ買いに行った。主人はおらずに中学生の子供がひとり店番をしていた。おそらく夫婦ふたりで手分けして借金のやりくりに駆けまわっているのであろう。中小商工業者よ、がんばってくれよ、といいたくなった。
ことしという年は、もちろん明るい希望の根がのびなかったわけではないが現象としては暗い悲惨な出来事が多かった。人の生命が粗末に取扱われた年であったことは否めない。さて、このようにしで貪乏人の犠牲のうちに、正直者がバカをみるような仕組みの政治のうちに、ことしもあと一日で暮れようとしている。