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東京の季節
- 著者
- 高木健夫
- 発行
- 昭和30年(1955年)
- 著者
プロフィール - 1905年福井県生まれ。「国民新聞」「読売新聞」「大阪毎日新聞」などの記者を経て、昭和14年北京で「東亜新報」を創刊して主筆となる。 戦後「読売新聞」に論説委員として復帰、昭和24年から17年間コラム「編集手帳」を担当。
秋
大正震災記念日
一日 大正大震災記念日
「日本は世界有数の地震国である」という自覚を持ってはいても、大地震が来るとやっぱりびっくりする。あわてる。まさに大地震こそは忘れた頃にやって来る。しかも何ほどかの不気味な週期率をさえ示しながら……。
北海道の「十勝沖地震」も考えてみればこのあたりは地震の名所地帯であって外側地震帯の直接の影響下にあるところなのだから、当然地震のあるべき地域であったのである。古い記録の正確なものはないけれども、日本列島は成立いらい地震に脅やかされている宿命を持っている。
「允恭天皇五年秋七月丙子朔己丑、河内国地震」と日本書紀の記しているのが最古の記録(西暦四一六年)だが、それから一八六五年(慶応元)までの地震記録は二千回にのぼっている。しかもこれが大体こんどの十勝沖地震程度以上のものである。
この中の大地震というものを注意してみるとおおむね百年ないし百五十年の週期をもって起っている。たとえば明応地震(一四九八)から慶長地震(一六〇五)までの百七年間、慶長地震から宝永地震(一七〇七)までの百二年、宝永から例の安政地震(一八五四)までの百四十七年間(坪井忠ニ「地震の話」)。地震予知の上にこの週期率は無視出来ない要素であろう。
日本が地震国であることの証拠は一年千五百回の有感地震があることだ。一月に百敷十回、一日四、五回は日本列島のどこかに人体に感ぜられる地震が起っているということになる。右に大きくゆれたり左に傾きすぎたりする日本人の政治感覚もこの様な風土に関係かおるのかもしれない。
大地震には必ず前兆がある。井戸の水が涸れたり、湖の水が白く濁ったり、水位が下ったり…日本の科学陣が、このように豊富な実験材料(?)を目の前にし、たくさんの地震観測の機構をもちながら、大地震の予報がまだ出来ない、あるいは見当がついても、あえて予報を出すだけの自信がないということは不思議な気がしてならないのである。