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NEWS

12/6/13
書籍「社労士が見つけた!(本当は怖い)採用・労働契約の失敗事例55」6/13発売しました。
12/3/28
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東京の季節

著者
高木健夫
発行
昭和30年(1955年)
著者
プロフィール
1905年福井県生まれ。「国民新聞」「読売新聞」「大阪毎日新聞」などの記者を経て、昭和14年北京で「東亜新報」を創刊して主筆となる。  戦後「読売新聞」に論説委員として復帰、昭和24年から17年間コラム「編集手帳」を担当。

一九五三年八月十五日

 一九五三年八月十五日
 きょうは戦争がいやになる日だ。もしくは八年前に戦争がいやになった日だ。もう、戦争なんかこりごりだ、と心の底から戦争を憎んだ日、憎む日。八月十五日。この日に戦争がいやになる本を読んだら、いっそう効果的だろう。そのおあつらえ向きの本が二冊ある。ひとつは朝鮮戦乱がはじまった直後に北鮮軍に捕ったフランスAFP通信のモーリス・シャントルーの捕虜生活三年間の記録「北鮮俘虜収容所」(井上勇訳・文芸春秋新社)。もうひとつは警視庁が記録として撮影した「東京大空襲秘録写真集」(雄鶏社)だ。
 シャントルーの「北鮮俘虜収容所」は右でも左でもない一個の自由な新聞記者が捕虜という「戦争の裏側」の生活から北鮮の戦争ぶりをみたもので「進歩的」な北鮮の「戦士」たちの考え方や動き方が生き生きと描かれる。それよりもこの革命の戦士たちが捕虜たちに「死の行進」をやらせたり、尼僧を殺したりする件りを読むと心の底から戦争がいやになること、うけ合いである。
 北鮮軍の下級将校は休戦の成立を喜んでいない。平和になれば彼らはまた苦しい農民生活に逆もどりして軍人の特権を返上しなければならないからだ、とシャントルーは見抜く。赤い軍人はどうも平和愛好者ではないらしい。革命というものは人道を無視しないと、どうも成功は覚つかないもののようだ。
 進歩的な総合雑誌の平和論文の百万ダラよりも「東京大空襲」写真集の、焼死体の、あの一ページをみた方が、平和へのあこがれの気持がどんなに強くなるかわからない。戦争の悲しみをこれほど無残に、しかも端的に訴えている本はない。なつかしいあの町、この町が、ただ戦争のために焼野原となり、生身の人間が一個のみにくいカーボン(炭)になってしまう。この写真集のページを繰りながら、悪夢というにはあまりに生々しい地獄相に、ともすれば心は平静を失いそうになる―が、その底からわきでてくるものは平凡だが二度とこんな目にあわないようにしたい、という万人に共通する願いだ。